4ヶ月遅れのライオン

 以前に書いたテキストの焼き直しです.
 先日,先生にすすめられて,Hal R. Varian先生のペーパー*1を読みました.自分の立ち位置と,進むべきところを再確認できたよい機会に接したように感じます.そんな折,このテキストをみつけたのでした.昔の私から,少しは進歩できているのだろうか…などと思いながら.のちに,これに対応する(すなわち,自身に回答を与える)テキストを書き綴ったのですが*2,それでもまだ,(自分にとって)未解決部分は残っているきがするのです.いまも,それらへの答えを探す旅にでています.
 以下の本の微妙なネタバレを含みますので,避けたい方はご注意ください.

3月のライオン 2 (ヤングアニマルコミックス)

3月のライオン 2 (ヤングアニマルコミックス)


 ――溶明.何も,ないことに,気付いた.
      *    *    *    *
 羽海野チカ*33月のライオン』1〜2巻を読了した.読後感は……,宮部みゆき『名も無き毒』*4を読了したときに似ている.あるいは、同じく宮部『ブレイブ・ストーリー*5の上巻,その中盤の,あの絶望感.足もとにあったものが,がらがら音を立てて,崩れさってゆくような.
 『3月のライオン』についていえば,それらよりもまだ粗削りに感ぜられるものの,希望が,想いが,手のひらの僅かな隙間から毀れてゆくような,圧倒的な絶望がそこに描かれている……気がするのだ.
 実は私,「ハチクロ」を読んでいないのだ.どうなんだろうか.アニメ化された当時,親密な関係にあった方が大好きだったようで,よく台詞を使っていたけれど,いまでは良い思いでである.ただ,何となく恋愛モノの側面が強いような気がして,忌避したという経緯があった.けれど,これだけの描写をされると,「読んでみようかな」と思わされてしまう.

「勉強しろよ
 してねーのわかんだよ
 わかってるけどできねーとか言うんならやめろよ!!
 来んな!!
 こっちは全部賭けてんだよ」


「逃げるならっ
 逃げれるくらいなら
 なんで…」

 ほんとうに,なんでだろう.私は,いまなにをしていて,なにができるのだろうか.好きなことに,打ち込んでいる? それは,学問を盾にした逃避になっていないだろうか? やりたいことをやっている,しかし,自分でも気づかないうちに,それに逃げ道を作っていないだろうか.
 ……いま,私は,全部,賭けられているのだろうか.

「好きなことをしっかり追い求めていくと、本物と偽物を見分ける力も付いてくる。いつも大声を出している生徒や、賢いふりをする生徒がいる。きっとそういう人たちは、自己主張が好きで、プライドが大事なんだ。でも、自分の頭を使って考える習慣があって、本物の味わいを知っているなら、そんな自己主張は要らない」*6


 ――溶暗.

*1:同氏のHPからDL可能.

*2:それはまた,別の機会に.

*3:あとから知ったのだけれど羽海野チカさんって,『ハチミツとクローバー』(いわゆる「ハチクロ」)の作者さんだった.無知すぎた自分.

*4:宮部みゆき名もなき毒幻冬舎,2006年

*5:宮部みゆきブレイブ・ストーリー(上)』角川文庫,2003年

*6:結城浩数学ガールソフトバンククリエイティブ,2007年