成人前後に2回も改名OK、評判リセット社会
単純に面白いなあ,と感じたのでご紹介いたします。
- 改名潮:台湾で改名ブーム、名前を変えて不況を乗り越える!?
金融危機による不況が深刻化する台湾で、開運狙いの改名ブームが起きている。有力紙・聯合報によると、中部・台中市では昨年1年間で約7400人が改名し、2月は昨年の月平均(617人)を上回る728人が名前を変えた。工場の集中する中南部を中心に失業者が増えており、改名で運気を好転させたいと願う人が後を絶たないようだ。
台湾の法律では、成人前後に1回ずつ計2回の改名が許されている。学業向上のため子どもの名前を変える親や、自身の開運のために改名する人が珍しくない。
南部・台南県では1、2月の改名者が1039人に達し、スタッフの3割が改名したというテレビ局も話題に。人名だけでなく、業績回復を願って社名に金へんの漢字を付ける経営者も増加中という*1。
- 台湾の改名におけるよく見られる4つの現象 「女時中水」
- 女性に多い:女性が約65%、最も多いのは20、30代、男性は40、50代で事業のために改名する人が多い。
- 改名時期を選ぶ:旧暦の“諸事不吉(何事も不吉)”の当日は改名を避ける。たとえその日改名するにも時間帯を考慮する。
- 改名傾向は中性:過去は建国、光復など時代背景のある名前を選ぶ傾向があったが、現在では上品、中性、比喩を含んだ名前が主流。例えば、心が広い意味の「宥」や祭祀の器という意味を含む「豊」など。
- “水”を含む字が流行り:霈や涵や泰など。*2
ところで,「改名」というのは,ある意味「評判リセット」と考えられるのではないでしょうか。
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たとえば,ネットオークション市場実験において,
「売り手の評判がわかる場合でも,自分の評判が悪くなるとその評判をゼロクリアして,別の名前で再参入できるようにした『再参入可能市場』で売りに出された商品……は,再参入が不可能な状態での評判市場にくらべると……平均品質が大幅に低下する」*3
通常ならば,こういった低品質の商品は駆逐されるはずです。 なぜでしょうか。
「人々は悪い評判が立ってまわりの人たちからつきあいを拒否されることによって生じる不利益を避けるため,悪い評判のもととなる不正直な行動を避けるようになる。これに対して再参入可能市場では,いくら悪い評判がつけられても,その評判はいつでもゼロクリアすることができ,名前を変えて再参入すれば困ったことにはならない」*4
ネットオークション実験結果からも,再参入可能市場では悪い評判があまり役に立ってないようだ,ということが傍証されます(詳しくは書籍をご覧下さい)。
山岸さんらは,近いうち神取・岡崎両先生によって邦訳予定のAvner Greif先生の『比較歴史制度分析』の分析例,あるいはGreif先生の分析枠組みにて分析する岡崎哲二先生の『江戸の市場経済―歴史制度分析からみた株仲間』を引き合いに出しています。
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*1:http://tw.people.com.cn/GB/14812/14874/9009640.html
*2:http://china8.blog82.fc2.com/blog-entry-980.html
*3:山岸俊男・吉田範章『ネット評判社会』NTT出版,pp.80〜82,2009年。
*4:同上
*5:専門じゃないので先行研究とかあったらごめんなさい。