バタフライ・エコノミックス

 さすがに字面と宇宙の話だけでは酷いので,以前某所にて書いたブックレビューを掲載させていただこうかと.

バタフライ・エコノミクス―複雑系で読み解く社会と経済の動き

バタフライ・エコノミクス―複雑系で読み解く社会と経済の動き


 「バタフライ」の名を冠しながら,その大半がアリ(プリンシパル・エージェンシー&学習行動)の話でした(!)たしかに,アント・エコノミクスよりは,タイトルに冠する語感としてよいかもしれませんが,内容に偽りアリ,ではないのかなあなどとおもいました.
 読み物としてはまあまあおもしろくよめたのですけれど,一般書のなかでの経済書としてはいまいちかなあという印象を受けました*1.オームロッドさんは,前作*2でもそうなのですけれど,どことなく,いわゆる「政策プロモーター」的な雰囲気を漂わせていてならないなあと.がんばってクルーグマンせんせいを批判しているのですが,その内容が「国際経済学」をお勉強なされた内容とは到底言えないようなものでちょっと悲しくなりました.しかもしれが「もっともらしい外観」を装っているのだから始末が悪いという.
 これを読むくらいなら,O.ブランシャール『マクロ経済学〈下〉』や『経済政策を売り歩く人々』を読むと,みんな幸せになれるとおもいます.
 内容としては,従来の経済学批判(RBCとか)がメインです.言うなれば,従来の経済学批判から生じる「実験経済学」のはしりのようなものであるといえるでしょう.あるいは,法と経済学,社会学と経済学の接近,などの紹介で,いまひとつ議論などが整然としていないかと存じます.3章,4章あたりは蛇足で駄作なので読み飛ばしてもいいかと.景気循環とか政策の話も同様.ほとんど読む価値がないということになりますけれど.しかし,アリの話と第5章*3は面白かったです.ムムッ,とおもった方,図書館や本屋さんで立ち読みしてみてください.資本主義ダイナミクスを描いてみせた12章もなかなかです.

*1:いまいちどころか,若干時間の浪費だったのでとばした

*2:経済学は死んだ!

*3:マーシャル「数学を焼き捨てよ」